<作品について>
10年前、映画『日々”hibi”13 fullmoons』を制
作した。2004年の元旦から 1年間、毎日ワンカット
15秒を順番につなげていくことで完成する映画を構
想し、完成させた。カットの長さだけでなく、毎日
の撮影する時間帯にも規則を設定した。満月の日は
深夜0時に、半月は朝6時に、新月は正午に、次の半
月には18時といった基準をもとに月の運行と連動し
たものだった。毎日、撮影する時間帯がずれていく
ので、完成した96分間はワンカットごとに撮影日が
異なるにも関わらず、なだらかに朝、昼、夜が連続
し、それが繰り返す構成が生成された。毎日のショッ
トは、偶然の出来事をとらえた日もあれば、構成を
考慮してわざわざ人に会いに行った日、気分が乗ら
ず適当にしか撮れなかった日もあった。
本作を「日記映画」や「ライフログ」と解釈する人
もいるだろうし、私もそのような側面を説明するこ
ともある。しかし、私自身の生活を正確に記録した
いという欲求はなかった。作者の関心の第一は撮影
者の意図を越えて多様な情報が残されていく映像の
特性にあった。そして、撮影をすすめながら、映像
メディアに潜む強力な記録性や、非演出のカットを
つなげただけでもフィクションが発生する不可思議
さに触れながら、その得体の知れない両義性に強い
関心を抱くようになっていった。鑑賞者が能動的な
視覚体験を獲得するような、私にとって目指すべき
映画がその地平にこそあるのではないかと…それ
は今でも考え続けている。
上映:山形国際ドキュメンタリー映画祭 ビジョンデュレール映画祭 他
出版: DVD レーベル SOL CHORD より(2008)