<作品について>
10年前、映画『日々”hibi”13 fullmoons』を制
作した。2004年の元旦から 1年間、毎日ワンカット
15秒を順番につなげていくことで完成する映画を構
想し、完成させた。カットの長さだけでなく、毎日
の撮影する時間帯にも規則を設定した。満月の日は
深夜0時に、半月は朝6時に、新月は正午に、次の半
月には18時といった基準をもとに月の運行と連動し
たものだった。毎日、撮影する時間帯がずれていく
ので、完成した96分間はワンカットごとに撮影日が
異なるにも関わらず、なだらかに朝、昼、夜が連続
し、それが繰り返す構成が生成された。毎日のショッ
トは、偶然の出来事をとらえた日もあれば、構成を
考慮してわざわざ人に会いに行った日、気分が乗ら
ず適当にしか撮れなかった日もあった。
本作を「日記映画」や「ライフログ」と解釈する人
もいるだろうし、私もそのような側面を説明するこ
ともある。しかし、私自身の生活を正確に記録した
いという欲求はなかった。作者の関心の第一は撮影
者の意図を越えて多様な情報が残されていく映像の
特性にあった。そして、撮影をすすめながら、映像
メディアに潜む強力な記録性や、非演出のカットを
つなげただけでもフィクションが発生する不可思議
さに触れながら、その得体の知れない両義性に強い
関心を抱くようになっていった。鑑賞者が能動的な
視覚体験を獲得するような、私にとって目指すべき
映画がその地平にこそあるのではないかと…それ
は今でも考え続けている。
hibi13fullmoons
日々”hibi”13 full moons / 96’00”/2005/digital
上映:山形国際ドキュメンタリー映画祭 ビジョンデュレール映画祭 他
出版: DVD レーベル SOL CHORD より(2008)
 
前作から4年後にあたる2008年に、もう一度、同じ形
式の映画を制作することを思いついた。ところが1月
の数日で撮影は続かなくなり中止となった。続かなか
った理由はいくつか考えられるが本当のところは分か
らないでいる。この年の8月に1ヶ月だけ撮影すること
にした。毎年、8月は移動が多いので楽しく撮影がで
きるのではないかと考えたのだ。そしてそれが完成し
たとき、8月の1ヶ月間を 12年間つなげて、前作と同
じ尺の作品として並べてみたいと妄想した。それから
6年が経過した。8月は、私にとって戦争を意識する特
別な月であると認識したのは実はこの数年のことだっ
た。

hibi-AUG
日々”hibi”AUG 6 years mix [2008-2013]/ 50’00”/2013/digital
上映:イメージフォーラムフェスティバル2014
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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