『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW』(以下『BYT』と表記)
『BYT』シリーズを開始したのは2008年でした。「前日と明くる日の声を映像に重ねる」という
指示書の核となる部分は「過去や未来を重ねながら現在を 見つめる視覚体験」というアイデアが
元になっています。その他に「個人が持つ声色の生々しさと映像の関係」であったり、「作者の
制作に対する動機や考察を 作品内部に含ませる構造」といったことも意識していました。当初は
自身の制作のための指示書でしたが、いくつかの作品を完成させるうちに誰かに制作しても らう
ことも想定するようになりました。
3.11東日本大震災が発生してから2週間が経った頃に、この『BYT』シリーズをネットで発表す
ることを思いつき、信頼する映像作家に呼びかけたことは 自然な流れでした。震災や原発事故を
テーマにすることは義務づけないで依頼したのですが、10作品ほど集まった頃、図らずもこのプ
ロジェクトが「2011 年の日本」を記録していることを実感しました。作品を見直してみると「全
体の中のひとつの作品」と意識して制作した人も少なくなかったように感じます。各人が映像表
現における「記録と創造」について考えを巡らせたに違いありません。
無形の事象を向かい合える対象にすることが「記録」であるなら、それをどのように共有したり、
身体にできるかを模索することこそが、映像表現における「創造」ではなかっただろうかと今は
考えています。
前田真二郎(恵比寿映像祭上映プログラム解説より)